アントロポゾフィー 医学とは


アントロポゾフィー医学は、ルドルフ・シュタイナー博士によって始められたアントロポゾフィーを基盤として、イタ・ヴェーグマン医師(1876~1943)の協力の下に創始されました。ドイツを中心に、現在では60以上の国々で実践され、20,000人以上の医師や8,000人近い各種療法家(芸術療法士、看護師、治療教育家など)が、この医療に携わっており、日本でも実践されています。

アントロポゾフィー医学では、人間を身体、心、精神の統合された全体性として捉え、各個人の生き生きとしたあり方を尊重します。

 

それは従来の医学を否定するものではなく、それらを補完しながらホリスティックなアプローチで拡張します。

◆ルドルフ・シュタイナー Rudolf Steiner, 1861 - 1925

 クラリェヴェクで生まれ、オーストリアやドイツ、スイスで活動した哲学者、神秘思想家、教育者。ゲーテの研究(とくに形態学などの自然科学論)や美学史研究ののち、アントロポゾフィー(人智学)という精神運動を創立した。その思想は、心理学者のユング、芸術家のパウル・クレーやカンディンスキーなどにも影響を与えたとされる。また、シュタイナーの人間観をもとにしたヴァルドルフ教育は、日本国内でも多くの教育現場で実践されている。このように医学だけでなく、教育、芸術、社会運動、自然科学、農業など、影響は多岐にわたる。

 

◆イタ・ヴェーグマン Ita Wegman, 1876 - 1943

 クラヴァンス(インドネシア)でオランダ人植民二世として生まれる。世紀の変わり目にヨーロッパに戻り、29歳のときにシュタイナーと出会った。その後、アントロポゾフィー運動に精力的に携わりながら、チューリッヒ大学で学び、1911年に医師免許を取得。1921年にアントロポゾフィー医学を実践するクリニックをアーレスハイム(スイス)に設立した。イタ・ヴェーグマン・クリニックは現在アーレスハイム・クリニック(Klinik Arlesheim)として幅広く地域の医療に貢献している。

■アントロポゾフィー医学のコンセプト

アントロポゾフィー医学の治療は、自然科学的な基礎に基づき、現代医学の有用な知識、技術や薬品すべてを用いるだけではなく、精神科学に根ざした人間像から導かれた独特の治療方法によって補います。それには、自然由来の薬品、ならびに、入浴、湿布や特別な(リズム)マッサージを用いた特定の理学的、看護的な療法、さらに造形、線描、絵画、音楽療法、オイリュトミー療法などが含まれます。

すべての芸術的治療方法の目的は、患者本人が治療者の指導のもとで自己治癒のプロセスを呼び起こし、この自己能動的で創造的な行為を通して健康になることにあります。

■統合医療としてのアントロポゾフィー医学

アントロポゾフィー医学の治療は、自然科学的な基礎に基づき、現代医学の有用な知識、技術や薬品すべてを用いるだけではなく、精神科学に根ざした人間像から導かれた独特の治療方法によって補います。それには、自然由来の薬品、ならびに、入浴、湿布や特別な(リズム)マッサージを用いた特定の理学的、看護的な療法、さらに造形、線描、絵画、音楽療法、オイリュトミー療法などが含まれます。

すべての芸術的治療方法の目的は、患者本人が治療者の指導のもとで自己治癒のプロセスを呼び起こし、この自己能動的で創造的な行為を通して健康になることにあります。

■アントロポゾフィーの薬剤

アントロポゾフィー医学で用いる薬剤は、生体の自然治癒力を高めることを目的としています。原料となる素材のうち、植物ではその治癒力がもっとも凝縮するような有機栽培方法がとられており、また製薬方法にも特別な配慮が払われています。アントロポゾフィー医薬品は、身体と精神の両方にはたらきかけ、崩れたバランスを元の健康な状態に戻していくことができます。がん治療に用いられるヤドリギ製剤も、そのひとつです。

■アントロポゾフィー看護

アントロポゾフィー医学の看護の方法もまた特徴があります。植物などから取られたオイルを用いたリズミカルアインライブングやハーブを用いた湿布、やはりオイルを用いた入浴療法(オイルバス)などがあります。これらもまた生体にそなわる自然な回復力を促します。

■各種療法

各種療法の詳細については各療法士会の項目から、それぞれのホームページをご参照ください。

◆音楽療法

音楽は、理性ではなく感情に働きかけます。療法士は、患者さんの状態や症状によって選び、聴くこと、または患者さん自身が演奏するなどの方法で、楽器や、声などを使用して働きかけ心身の調和を図ります。

◆歌唱療法

スウェーデンのオペラ歌手ヴァルボルグ・スヴァルドストローム=ヴェルベック(1879-1972)によって生また歌唱指導法から発展したセラピーです。

絵画療法

素描・フォルメン・絵画療法は、自分自身の内面のバランスをとることに集中的に取り組むための活動です。呼吸を整え、心身にリズムを与え、調和をもたらし生命力を高めます。

造形療法

石、木、粘土、蜜蝋などの様々な素材に触れ、取り組むことで、自らの中の内的な感覚や力の存在に気づき「かたち」として現していくことが身体と精神の両方に前向きに働きかけます。

オイリュトミー療法

運動療法であるオイリュトミー療法は、言葉の母音や子音、またリズムなどを手足を使った動きに現します。動きは身体の各器官と深い繋りをもち、バランスの損なわれた機能に働きかけます。

音楽、彫刻、絵画、身体芸術、詩の朗誦など、人間の文明の中で培われてきたこれら芸術すべてが、アントロポゾフィーの理解の下で治療の中でも行われています。

 

■教育との関連

アントロポゾフィー医学は、子どもの教育について、将来の特定の病気への傾向を防ぐ予防医学としての側面をもっていると捉え、重視しています。子どもの頃に、思考、感情、意志をバランスよく育てることが、成人になって身体的な側面へも影響を及ぼすと考えています。また、例えばシュタイナー教育で使われる水彩やフォルメン、オイリュトミーや音楽など、治療における各種芸術療法と無関係ではありません。このようにアントロポゾフィーにおいては、教育学と医学は相互に影響しあい、子供の健康とより良い成長に寄与しています。